H44 わわわ 買い物のお供ほど虚しいものは無い。荷物持ちならまだしも、待つのに疲れて選んでいる時に話しかけようものなら 『これいいなと思うんだけど、最近黒い服ばっか買いすぎだよねぇ。どう?』 どうって、何がどうなのだ?それがいいなら買えばと言えば逆切れされる理不尽なポジション。 「まだですかー?」 「ぜんぜん、まだでーす」 駅ビルに入っている携帯ショップに立花が携帯を変えに行くのに付き合わされたのだが、例外にもれず竹下は暇を持て余していた。 放課後に貸していたシャツを返して貰うだけだったのに、佐藤がこれから駅前の本屋に行くと話してしまったばかりに用の無い竹下は立花のお供にされてしまった。 「そんなに悩むなら一円のやつでいいじゃん」 「一円なのは新規の人だけだし、それ機能がびみょー」 「…めんどくせぇ」 携帯デンワなのだから通話できればそれでよいではないか。 「ん〜、竹下君も携帯買ったら?」 「携帯の分をパソコン回線の費用に充ててるから無理」 「ネットなんて学校ので十分じゃない」 「家でも使える方が便利なんだよ」 「エロいの見たり?」 「そりゃ見るけど、それ以外ににも色々と」 「そうなんだー」 竹下の話に適当に相槌を打ちながら、立花はパンフレットのページをめくる。 「佐藤君遅いね」 「俺も本屋行っとけばよかった」 「付いてきてくれるって言ったのに、2人とも居なかったら意味無いじゃん」 「居ても意味無いだろ」 「そういうものなのー」 連れション感覚なのだろうが、何が悲しくてトイレを混雑さねばならないのか。 トイレが怖いから付いてきてくれとピーピー言うアカリの方がまだ理解できる。 「決まりそうにないならパンフレット貰って帰ろう」 「うー、佐藤君来るまで居る。このデザインがいいのに高いよぉ、テレビ要らないのに」 「そういうもんだ」